STORYTIME CROSS TALK|Caravan × ひがしちか 対談
ミュージシャンのCaravanさんがことばを紡ぎ、日傘作家のひがしちかさんが、そのことばからイメージした世界を絵で表現した、第1回目のSTORYTIME「フューチャーボーイ」。初めての「STORYTIME」、初めてのコラボレーション、『フューチャーボーイ』制作の裏話、始まり、始まり。
Caravan(以下、C):「いいじゃないですか! なんか鳥肌が立ちました。すでにあることばに絵をつけていくことは難しくなかったですか?」
ひがしちか(以下、H):「いつもは真っ白なところから、何も考えないで描くんです。もうどんどん考えないようにしていて。今回は考えて描かなきゃいけなかったから、はじめはうまく描けなかった。でも、ことばに対してひとつずつアクションするってことに気づいたときに、すらすらっと描けました」
C:「俺もはじめはスト-リーを考えたんだけど、そういうセンスはなくて、無理だなって思った。だから、メロディをのせられそうなことばを書こうと。じつは、もうすぐ子どもが生まれるんです。そんなときに、子どもも大人も一緒に読めるようなものをという依頼がきたから、すごいタイミングだなと思って。それで、『フューチャーボーイ』というタイトルから決めて書いていきました」
H:「はじめて読んだときは、もう恥ずかしくってドキドキしちゃいましたね。絵を描くことも、みてくださる相手にとってはなんてことないんだろうけど、自分の裸を見られているようで恥ずかしいんですよね」
C:「手紙のようでもあるし、日記のようでもあるし、ね。今回は、具体的に、旅をしなさい、窓を開けなさい、というんじゃなくて、もっと抽象的なんだけど、いろんなふうに受け取れることばっていうのを書きたくて。簡単なことばだけど、「回せ」だけじゃなくて、「回せ 回せ 止めるな回せ」だと何を回すんだろう?って、読み手も考えるよね? そういうところまで想いが届くというか、繰り返されるたびに意味が深まればいいなと思って」
H:「同じことばを2回繰り返すところが、行ったり来たりしているみたいでおもしろかったです。同時に日本語ってほんとうに奥深いなって思いました。「回る」じゃなくて「回せ」、「燃える」じゃなくて「燃やせ」。自分で自分に命令するみたいな」
C:「結局、誰かに言っているようで自分に言っているところもあるし、いるんなふうに取ってもらえたらいいなと思いますね」
H:「最初は、このページ(そしていつの日か~)から描きはじめたんです。でもなかなか進まなくて、一度このページを離れて、別のページを描いて… 最後にこのページに戻ってきて、小さな動物を描き足しました。絵の具を消したりしていると、いい感じににじみも出てきて」
C:「このページ(踊れ踊れ~)は、色も変わるし、パーンと具体的な人間が出てきたりするから、ポイントになっている気がしますね」
H:「じつはこの絵、本当に偶然なんですけど、昔の絵をいろいろ引っぱり出していたら、15年前に描いた絵が急にぱらっと落ちてきて。昔は変なのを描いていたんだなぁと思ったんですけど、これがどうもこのページに合うんです。全部抽象的なままでいこうと思っていたんですけど、ここだけ具体的な絵を入れてもいいんじゃないかなと思って提案しました」
C:「視覚的に色が入ったり、絵の動きが入ってくると、ことばが生きてくる。生命力を感じました。この絵からも想像力がすごく広がっていくだろうし、ことばに絵がついたことで、メロディがついた歌のようにも感じましたね。すごく好きですね!」
H:「よかった! 私は青で描くのがいちばん好きで、青が自分の得意な色。自分ができるいちばん得意なことをやろうと思って描きました」
C:「俺自身、プライベートでもリニューアルのタイミングで、マンモスのリニューアルに関われてよかった。個人的な想いもたくさん入っているからね。子どもはもちろん、大人のなかにある子どもの部分にも響く気がしています。たくさんの人に見てもらいたいですね!」
Caravan
ミュージシャン。1974年生まれ。幼少時代を南米ベネズエラで過ごす。独自の目線で日常を描くリアルなことばと聞く者を旅へと誘う美しく切ないメロディは、世代や性別、ジャンルを越えて幅広い層からの支持を集めている。ニューアルバム『TheHarvest Time』は、10月15日に開催される昭和女子大学・人見記念講堂ライブ会場にて先行発売予定。
ひがしちか
日傘作家/Coci la elle主宰。1981年、長崎県生まれ。2010年、一点物の日傘屋として、Coci la elle(コシラエル)を立ち上げる。自身で日傘に絵を描き、傘をつくるのはもちろん、オリジナルプリントの雨傘やスカーフなど小物のデザイン、ブランドのディレクションもおこなう。著書に『かさ』(青幻舎)がある。
mammoth [マンモス] No.35 SONG Issue(2017.9.15発行)
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